当院の代表的治療

骨粗鬆症に伴う骨折への加療

骨粗鬆症性椎体骨折とは

骨粗鬆症とは骨の強度が低下して脆くなる病気です。その結果、日常の些細な動作で起きる骨折が骨粗鬆症性骨折です。骨折しやすい部位には、「太ももの付け根(大腿骨頚部骨折)」、そして「せぼね(椎体骨折)」があります。

骨粗鬆症性椎体骨折は、骨片が後方の脊柱管内(脊髄・神経の通っている骨のトンネル)に突き出る程度によって重症度が決まり、その重症度によって症状や治療が異なります。

発症初期には、非常に強い痛み、特に「寝たり起きたりするときの強い痛み」を伴います。慢性期になると、持続する痛みや、背骨がつぶれたことによる姿勢異常(後弯(こうわん)変形による腰曲がりの状態)によるものとがあります。後弯になると、胃が圧迫されて苦しくなったり食欲不振になったり、逆流性食道炎のような症状が出ます。時に、動けなくなるほどではなく、「ちょっと痛い」くらいの痛みで、気がつかないうちに骨折が起こっていたという人もいます。

椎体骨折では椎体の後ろの壁(後壁)が骨折を起こしていることが多く、後壁が骨折すると、骨片がさらに後方にある脊柱管内に飛び出して、脊髄を圧迫することがあります。その場合は、腰の痛みだけでなく、下肢へ走る痛みと麻痺がおこり、足が動かない、おしっこが出ないなどの神経症状が出ます。

通常はレントゲン検査だけでの診断は困難で、MRI検査で診断をします。骨の形は保たれていてもMRIでは輝度に変化があり、骨折と診断できます。例えば、一つの椎体だけでなくいくつも骨折している場合がありますが、そのような場合もMRI検査を行うと、古い骨折なのか新しい骨折なのかが診断できます。骨折している椎体は寝たり起きたりの動作でグラグラと動く(椎体動揺性)ため、その椎体動揺性の程度を寝たり起きたりして撮った(動態撮影)レントゲン検査やC T検査で評価して 骨折の重症度 の判定をします。骨折の重症度に応じてそれぞれの方に合った治療を行います

治療

1.保存治療

麻痺などの神経症状がない場合は、まず保存的な治療を行います。多くの患者さんは保存治療で症状の改善がみられます。
後壁に骨折があって椎体動揺性が強い場合には、背中をそらした状態で骨折した椎体をできるだけもとの形に戻して(骨折の整復)、体幹ギプスを作成し、4週間のベッド上安静を行います。椎体動揺性が軽度の場合には、体幹ギプスを行った後、歩行が可能です。
体幹ギプスを4週間行った後は、硬性コルセットに変更して歩行が可能になったら退院可能です。後壁に骨折がない場合には、軟性コルセットを装着して歩行が可能になったら退院できます。
入院期間の目安は、痛みが軽快し歩行が可能になるまでとなります。個人差がありますが、おおよそ1~3ヵ月程度です。

後壁の突出

2.手術治療

経皮的椎体形成術(けいひてきついたいけいせいじゅつ)

十分な保存治療を行っても痛みが取れない場合には、経皮的椎体形成術の適応となります。骨折した椎体の中に骨セメントを注入して椎体を安定させるというものです。エックス線で確認をしながら行います。
椎体の中に入れるのは、人工関節手術で使用しているセメントです。当院ではBKP(Balloon Kyphoplasty:バルーンカイフォプラスティ)と呼ばれる手術を行なっています。

BKPは、骨折した椎体の中に非常に丈夫なバルーン(風船)を入れ、それを膨らませることによってつぶれた椎体を押し広げて椎体の形をある程度もとの形に戻し、その中に骨セメントを入れる方法です。以前は、注入したセメントが脊柱管内にもれて神経を圧迫して麻痺が生じたり、血管内に入ってそこから肺塞栓症を起こすリスクがありましたが、現在は骨セメントの改良と手技の改善によって、そのリスクはかなり減りました。
手術時間は30分~1時間以内に終わります。全身麻酔での手術なので手術中の痛みはなく、術後もほとんど痛みを伴いません。術後は、患者さんの状態にもよりますが、通常は翌日から歩行訓練が可能です。

経皮的椎体形成術

手技

脊椎インストゥルメンテーション

金属のスクリュー(ネジ)やロッド(棒)を用いて脊椎を固定したり矯正したりする手術です。神経症状がある場合には、脊椎インストゥルメンテーションとともに、神経除圧術を行い、麻痺の改善をはかります。
後弯変形が固まってしまっている症例では、インストゥルメンテーションだけでは矯正しきれないため、骨を切り取って姿勢を変えること(骨切り)も行います。かなり長時間に及ぶ大がかりな手術になります。

退院後の留意点

退院後しばらくはコルセットを装着します。また、寝たきりになるとさらに骨が弱くなるので、散歩などの適度な運動をお勧めしています。

また骨粗鬆症の治療のため、骨形成を促進するような注射薬(副甲状腺ホルモン製剤)や骨吸収を抑制してカルシウムが骨から逃げないようにする薬(ビスホスホネート)を用います。

骨粗鬆症が根底にあるため、骨折した椎体を治療しても、隣接する椎体が新たに骨折してしまい、後弯になってくる場合が多くあります。治した椎体がさらにつぶれるというよりも、治療していない椎体がつぶれることの方が多いのです。また、1ヵ所骨折が起こると、次に起こる確率が高くなると言われています。新たな骨折を予防するためにも、適度な運動と確実な薬の服用、そして、転ばないように気をつけることが大切です。

骨粗鬆症性椎体骨折  入院症例数

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